「頭金なし(自己資金なし)で大家」というセールストーク
最近(2019年8月)、年金不安の問題もあって、各地域で開催される不動産投資セミナーが盛況のようです。
30歳代くらいの若い世代でも、「早めに老後資金のことを考えよう」という人が増えているのでしょう。
ネットを見ていると、「頭金なしで不動産投資ができます」、「自己資金が少額でも始められます」という言葉を多く見ます。
自己資金ほとんどを使わずに、家賃収入が入ってくるって、魔法みたいですね。
そういえば、先日、朝日新聞に、住宅ローン「フラット35」を使って不動産投資をしている事例が多くある、という記事がありました。
その記事中に、自己資金をほとんど使わずに住宅ローンを使って収益物件を買った人が紹介されていました。
不正融資が問題になったスルガ銀行なども、物件価格を吊り上げて、物件以上の融資を引き出して、自己資金がなくても買えるようなスキームを一部では使っていたようです。
そのような不正はせずに、「頭金なし」または「自己資金が少額」で不動産投資ができるのでしょうか?
結論から言えば、「不動産は買えるけど、儲からない」です。
「頭金なしで大家になれます」は不動産販売業者のセールストークなのです。
不動産を買う時の費用や自己資金について解説します。
不動産を買う時にかかる費用って?
まず、不動産を買う時にどのような費用が掛かるのかを説明します。
物件代金のほかに次のような費用がかかります。
・登録免許税
・司法書士報酬
・不動産取得税
・火災保険料
これらの費用を取得時の諸費用と呼びます。
物件価格の1割程度が目安と言われます。
それ以外に、中古物件であれば、必要に応じてリフォーム費用などが発生します。
「自己資金なし」であれば、諸費用も含めて、借り入れをすることになります。
「頭金なし」であれば、物件価格を借り入れて、諸費用は自己資金で賄うイメージだと思います。
物件価格を上回る借り入れをオーバーローン、物件価格全額の借り入れをフルローンと呼びます。
そのような借り入れができるのは、担保価値のある物件か高利回りの物件となります。
数年前であれば、オーバーローンやフルローンも多かったようですが、昨年くらいから融資の基準が厳しくなりました。
オーバーローンやフルローンでの融資を受けることは難しくなっています。
それでも、フルローンで借りることができるのは、土地を持っている地主さんのアパート建築、または、新築ワンルームマンションくらいだと思います。
新築ワンルームマンマンション程度の価格であれば、サラリーマンの与信を利用して借り入れできる可能性があります。
新築ワンルームマンション投資は儲かるのか?
地主であれば、土地代が要りませんので、建築費用だけを全額借り入れすることは今でも可能です。
一定の賃貸需要がある地域で、建築費用が大きくならないように注意して、しっかりと運営すれば、フルローンでも十分に経営は成り立ちます。
もちろん、賃貸需要のない地域に、無理やり一括借り上げのアパートを建てるようなことはダメです。
では、新築ワンルームマンションの場合はどのような投資になるのでしょうか?
新築ワンルームマンションの販売会社のHPをみると、物件価格のほぼ全額を借り入れる事例が紹介されていることが多いです。
諸費用は自己資金で賄うのでしょう。
しかし、都内のワンルームマンションであれば、2000万以上の価格です。
ハイグレードであれば、3000万円以上の物件もあるようです。
諸費用だけでも200万円近くかかるのではないでしょうか。
諸費用程度の資金は必要でも、平均年収程度のサラリーマンであれば、新築ワンルームマンションをフルローンで買える可能性は十分にあります。
買えても「儲からない投資」になることも
ただ、「買える」=「儲けが出る」ではないことに注意が必要です。
よく言われることですが、新築ワンルームマンションは儲かりません。
検索すれば、その理由を詳しく解説されているHPがいくつもありますが、簡単に言えば、キャッシュが残らないのです。
新築ワンルームで、月に1万円程度のキャッシュしか残らないシミュレーションがマンション販売会社のHPなどに掲載されています。
固定資産税や所得税などの支払いもありますし、家賃が下がったり、金利が上がれば、毎月の収支がすぐにマイナスになってしまいます。
毎月のマイナスを給与で補いながら運営して、30数年後にいくらで売れるのでしょうか?
または、借金返済後に持ち続けることもできますが、そのくらいの利回りであれば、金融商品への投資の方がいいのではないでしょうか?
自己資金を貯めて、不動産投資を
新築ワンルームマンションは普通のサラリーマンでも買える可能性はありますが、儲かりません。
儲からないだけではなく、資産を減らす可能性も高いです。
普通のサラリーマンが不動産投資をするのであれば、しっかり自己資金を貯めて、キャッシュフロー重視の不動産投資を目指すべきだと思います。
キャッシュがあれば、使わなくても、信頼になります。
一般のサラリーマンがコツコツと貯蓄をしていれば、それを金融機関は評価してくれます。
年収1000万円でも浪費家で貯蓄なしの人よりも、年収500万円でも1500万円の貯蓄がある人の方が融資を受けやすいかもしれません。
私の場合も、年収が低かったのですが、貯蓄があったので、借り入れもできました。
自己資金と言っても、全部を物件購入費用に使うとは限りません。
不測の事態もあるかもしれないので、運営資金としてストックする必要もあるのです。
そういう意味で、ぎりぎりの資金運営にならないために一定の自己資金は必要です。
まずは、お金を貯めましょう。
不動産投資の安全性を高めることになりますし、金融機関に対する信頼にもつながります。
もちろん、「どうしようもない物件」を買ってしまっては意味がないですが・・・。
自己資金の貯め方や、私のような属性の良くないサラリーマンができる不動産投資の方法については別の記事で書きたいと思います。
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